南紀白浜・千畳敷の夕暮れ
はじめに:一山一会。
50代、私と山と、信頼できる道具たちのこと
山登りとは無縁だと思っていた私が、今こうして山に登っている。
きっかけは、大分旅行中にたまたま歩いた遊歩道でした。登山ではなく、くじゅう連山を眺めながらのんびり散歩しただけ。それなのに、山の稜線が織りなす景色と澄んだ空気の心地よさが忘れられず、帰宅してすぐ地元の低山へ向かいました。
当時はもちろん、特別な装備なんて持っていません。普段着にスニーカーという、今思えば少し危なっかしい格好。それでも、一歩一歩山を歩いた後の食事が、あまりに美味しかったのです。山頂で風に吹かれながら食べるおむすび、そして下山して食べる温かい食事。それらすべてが最高のご馳走だと心から感じ、私の「山旅」は始まりました。
始まりはソロ登山。
自然と向き合うシビアな現実
人に迷惑をかけたくないという想いから、私の登山の始まりは「ソロ(単独行)」でした。
しかし、人の少ない低山は想像以上に山道がわかりにくく、どこを歩けばいいのか迷いそうになり、ヒヤリとした経験もあります。静かな山の中でルートを見失いかける恐怖。登山は楽しいだけでなく、常に命と向き合うシビアな一面もあるのだと、その時初めて実感しました。
そんな山の厳しさを少しずつ受け入れ、安全に歩くための知識を重ねながら、一つひとつ山を越えていく日々。気がつけば、これまで歩んできた山は60座を数えるまでになりました。


乳がん手術を経験。
「できないことが増える」のは嫌だった
登山が生活の大切な一部になってまもなく、思いがけない試練が訪れました。検診で乳がんが見つかったのです。
無事に手術を終えたものの、待っていたのは日常生活における細かな制限の数々でした。
- 「土を触らないこと」
- 「虫に刺されないこと」
- 「激しい運動は控えること」
いずれも、リンパ浮腫を防ぐための制限です。
これらの言葉を突きつけられたとき、「もう山に戻れないかもしれない」——頭をよぎったのは、言葉にならないほどの絶望感でした。山を歩けば土や泥は身近にありますし、虫対策も完璧にするのは容易ではありません。斜度のある道を登ることは、体にとって激しい運動そのものです。
目の前が暗くなるような落ち込みを経験しました。それでも、「年齢や病気を理由に、自分のやりたいことができなくなっていく」のは、どうしても嫌だった。自分の人生は、自分で納得のいく形で進めていきたい。
そこで、どうすればこれらの制限を守りながら安全に山を歩けるか、じっくりと自分なりの答えを探すことにしました。
傷口やデリケートな肌を守るために徹底したのは、「ほとんど肌を露出しないスタイル」です。首元や手元もしっかりとカバーし、虫や泥が入り込む隙間をなくしました。さらに、体に強い負担をかけないよう、時間にたっぷりと余裕を持ち、心拍数を上げすぎないマイペースな登り方を心がけることに。
自分の体と対話し、慎重に準備を整え、術後2ヶ月。私は再び、大好きな山を目指して一歩を踏み出しました。
向かったのは、いつも練習で登っている近所の里山。2時間ほどのコースでしたが、一歩一歩踏みしめながら歩けていることが、ただただ嬉しかった。
今もホルモン剤の影響で、むくみや体温調節に悩むことがあります。完全に万全な体で山に立てているわけではない。それでも、自分のペースで歩き続けることが、今の私には一番の薬になっています。
自分の体と向き合い、
選び抜いた「信頼できる道具」
病気というハードルを抱え、50代の体で長く安全に歩き続けるために選んだのは、「軽さ」と「機能性」。そして何より、「信頼できるかどうか」でした。
以前はスニーカーで歩いていた私も、今では道具選びに対して自分なりの厳しい基準を持つようになっています。
- 軽さ:体に余計な負担をかけず、体力を温存するために不可欠な要素。ただし、軽ければいいというわけではなく、実用性とのバランスを大切にしています。
- 機能性:肌の露出をなくしつつ、汗を逃がして快適に歩くために。私の体をトラブルから確実に守ってくれる、確かな作りのものを選びます。
- 信頼性:過酷な山の環境の中で、自分の身を任せられるかどうか。
山道具は、大自然の中で私たちの体に直結する大切な存在。だからこそ、自分が「絶対に信頼できる」と心から確信したものだけを、相棒として選ぶようになりました。
このブログでお伝えしていくこと
このブログでは、私のこれまでの歩みや、162.5cmという私のサイズ感・使用感を含めた道具のレビューを、等身大の言葉で正直にお伝えしていきます。
ブログを訪れてくださった方に、少しでも役立つヒントをお届けできるよう、主に以下の3つの内容を発信していく予定です。
- 【山道具の正直な使用感レビュー】 身長162.5cmのハイカーとして、ウェアの実際のサイズ感、バックパックを背負ったときのバランス、小物の使い勝手などを、良かった点も気になった点も含めてありのままに綴ります。
- 【50代からの山旅の記録】 これまでに歩いた60座の経験(季節ごとに美しく色づく九州の山々や、友達と訪れた立山など)をもとに、無理のない大人の登山ルートや景色の魅力を写真と共に振り返ります。
- 【安全に楽しむための工夫と経験談】 ソロ登山でのヒヤリとした経験や、乳がん後の体調の変化や対処方法など、私なりの視点でお伝えできたらと思っています。

あなたの「一歩」を応援したい
もし、あなたが今、 「50代から山を始めるなんて、もう遅いかもしれない」 「体に不安があるから、新しい挑戦はあきらめるべきなのかな」 と、一歩を踏み出せずにいるのなら、ひとつのヒントになるかもしれません。
何かを始めるのに、遅すぎるということは絶対にないと私は信じています。乳がんの手術を経て、たくさんの制約に戸惑った私でも、自分の体と向き合い、信頼できる道具を味方につけることで、こうしてまた山に戻ってくることができました。
最初から高い山を目指す必要はありません。今の自分に合った道具を選び、自分のペースで歩めば、山はいつでも心地よい時間を分け与えてくれます。
最後に、私がいつも心の中に置いている言葉があります。
「今日が人生で一番若い日」
私の失敗や経験が、誰かの「困った」を解消し、より自由で安全な山旅を叶えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
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私を山に連れ戻してくれた、信頼できる道具たちのことはこちらにまとめています。
そして、道具と自分を信頼して歩いた、忘れられない旅の記録です。
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